SOLIZE株式会社

変革コンサルティング

若手変革リーダーを中心とした「自らを変え続ける」意志と実行力
~設計思想の再構築を起点としたDX~

鉄鋼
株式会社神戸製鋼所

若手変革リーダーを中心とした「自らを変え続ける」意志と実行力

市場ニーズへの対応力強化のため、機械事業の設計変革を推進

株式会社神戸製鋼所は、100年を超える歴史の中で社会の期待に応え続けるために、事業を変革しながら培ってきた「素材」「機械」「電力」の3事業にまたがる総合力を強みとしています。妥協なき技術追求と、徹底した現場主義を貫き通してきた同社は、新たな社会ニーズや産業構造変化への対応力を強化し続ける、たゆまぬ変革を推進しています。同社の機械事業※1においても、技術・製品の付加価値向上や生産性向上はもちろん、カーボンニュートラルへの挑戦など、未来に向けた積極的な変革を実施しています。

同事業は受注生産型製造が主であり、その設計業務は、お客さまに提供する付加価値や生産性を大きく左右する重要な業務です。設計業務は、お客さまの要望に対して自社技術や製品を統合的に提案しながら実現性も含めて要件を整合していくため、求められる要求は高度化・複雑化の一途で、製品全体における横断的で高度な技術検討要素が集積しています。そのため、お客さまへの提案力強化はもちろん、業務の脱属人化や効率化が重要なテーマとなっていました。

そこで同社の機械事業部門が、持続的な顧客満足度の向上と生産性向上を目指した抜本的な業務変革プロジェクトを企画したところ、事業の主力である回転機※2(非汎用圧縮機)部門の設計部署メンバーがトップランナーとして有志で名乗りをあげ、変革活動の第一弾に着手しました。

設計思想の再構築を起点に「個人の経験」を「組織の知恵」に

同部門の設計業務は「顧客満足度を追求する方針」のもと、お客さまからの回転機に関する要求情報を各種装置類の要件として具体化し、社内の設計部署間でスペック/配置/取り合い情報などを整合します。そのうえで基本設計・詳細設計において必要な設計図書類を作成し、調達・製造パートナーと調整を進めていきます。

同設計部署としても独自に改善を推進してきた一方で、製品特性上、顧客要求が毎回異なり標準化が困難であることと、技術検討が複雑で影響が多岐にわたること、そして関連部署の連携が広範であいまいな領域が発生せざるを得ないこともあり、設計業務の属人化や個別最適になりやすく、非効率や手戻りの原因となっていました。また、業務間での3D設計データや付帯資料の管理運用が各種制約により連携不十分であることも、非効率の温床となっていました。

そこで、同部門の設計者を中心とした変革推進メンバーは、徹底した業務実態の可視化に基づく議論を重ねながら「神戸製鋼の回転機設計として目指す業務のプロセス」を描きあげることで、実現に向けた課題と方策をロジカルに立案しました。ツールやシステム化ありきの「手段の目的化」ではなく、高い目標達成に向けて「業務プロセスの整流化」「製品構造の標準化」「ナレッジ化」「組織体制や人材育成の見直し」などを含め「デジタル技術を活用」することで、網羅的に課題へ対処していく本質的な業務変革を推進していきました。

まず、変革活動のコアとして「回転機設計思想の再構築」に着手しました。設計者ごとに存在していたコアな暗黙知を背景/意図/技術根拠を紐解き「お客さまにとっての最適とは何か」を念頭に、体系化していきました。

これは「顧客要求を満たしたうえでお客さまに提供する付加価値を最大化するための、コストと品質のバランスがとれた神戸製鋼としての設計検討ロジックや判断基準など一式」を再構築することであり「個人の経験」を「組織の知恵」として競争力に転換する挑戦でした。具体的には、回転機全体の共通設計プロセスとして、設計の各段階でどの要件をどの時期までにどの部署がどのレベルまで詰めるべきかの進め方や、コンフリクトが発生した際の優先順位や成立性判断のポリシー、オプション選定の考え方などを徹底して標準化しました。

そのうえで、ターボ・レシプロ・スクリュの3製品ごとの特性を踏まえた設計品質基準・図面品質基準の定義や、検討の品質と効率を向上するための設計プロセス・標準書・マニュアル・デザインレビュー・品質チェック項目等のナレッジ類の整備、半自動で業務を支援するツール群として業務に実装していきました。

  • ターボターボ

  • レシプロレシプロ

  • スクリュスクリュ

たとえば「顧客要求・仕様決定・配置検討における設計思想体系化」のアプローチでは、従来は過去図面や実績データ類を参考に、各設計者が暗黙的な判断基準で構成部品の仕様や選定・配置決定をしていた業務の品質と効率の底上げのみならず、各設計部署間での修正や手戻りを削減する効果につなげています。

お客さまの視点で付加価値を追求する提案型仕様確定プロセスへ

回転機のような受注生産型製造業では、見積り段階における「顧客ニーズの抜け漏れのない把握」と「自社のコア技術を応用した付加価値提案力」の両立が、顧客満足度と生産性に直結するため特に重要な要素です。一方で、製品の特性上、一品一様の要求・要件定義となる同業界の常として、受動的な仕様確定プロセスにならざるを得ません。そこで、同変革推進メンバーは、より上流の見積り段階から品質と効率を積極的に担保する変革のフロントローディングを進めています。

先述の設計変革で構築した標準検討プロセスと標準オプション、ノウハウ類をもとに、それらの確定に必要な優先度の高い情報や要件を、要求仕様に変換することで、見積りから基本設計、詳細設計までをシームレスに提案型で仕様確定していく業務プロセスとして再構築しました。

これにより、業界他社に先駆けて一般的な受動的・個別要求対応型の業務スタイルから脱却し、付加価値提案型の仕様確定スタイルへ変革を進めることで、提案の内容・スピード・精度の向上など、お客さまに提供する付加価値のさらなる向上を進めています。

「自らを変える」変革意志と実行力が新たな成長ドライバー

同変革推進メンバーは、従来から実施してきた改善活動に加えて、本活動で構築した新しい業務の仕組みに関する実案件適用を段階的に進めており、それぞれQCDでの成果を実証しながら、着眼大局・着手小局でスピーディにスモールサクセスを積み上げています。また、それら仕組み一式を、PLM(Product Lifecycle Management)プラットフォームなどに実装し、さらなる進化へも着手し始めています。

また、業務面以上に得られた大きな成果は「若手リーダー層とそれを支える変革メンバー・実務メンバーが、本活動を通じて数多くの変革の修羅場をくぐりぬけてきたことで、主体的に従来のやり方や固定観念を打破し、組織の枠を超えて変革のコミットメントを醸成しながら、同社の変革推進に必要な技術的・文化的な持続的基盤を構築し始めている」ことです。

本成果を受け同社では、他製品領域や他テーマにも同様の変革アプローチを展開することで、さらなる変革の推進と、変革意志・実行力を醸成し「お客さまや社会にとって『かけがえのない存在』としてあり続ける」ためのたゆまぬ活動を進めています。

機械事業部門
圧縮機事業部 回転機本部
回転機技術部
部⾧
田中 宏明 様
(本活動のプロジェクトリーダー)

「顧客ニーズの多様化・高度化が進む中、これまでの設計経験を振り返り、何らかの変革が必要なタイミングではないかと感じていました。ちょうどその折に、機械事業部全体での変革企画があり、真っ先に手を挙げました。活動を通じて特に大切にした軸は『設計思想の体系化』から始まる変革活動です。開始当初は、3D活用の高度化やモジューラー設計ほか、DXという言葉も一部で先行していましたが『何が本当に必要なのか』をチームで徹底的に議論した結果、共通意志として醸成されていきました。それを踏まえ、活動メンバーが主体となって、お客さま視点で設計プロセス全体を見直し、熟練者の知見も借りながら、暗黙知を組織知化した新しい仕組みへと進化させてくれました。本活動を通じて、組織の垣根を超えたコミュニケーションが活性化していること、そして若手を中心とした変革人材が成長し、組織の変革機運が高まっていることが、何よりの成果と感じています。変革活動とは競争力を強化し続けるための終わりのない活動であり、組織横断的な共創こそ大切です。これからも続けていく本件活動をベースに『組織一体で変革を推進する文化』として根付くように進めていきたいと思っています」

機械事業部門
圧縮機事業部 回転機本部
回転機技術部 ターボ室
吉田 創 様
(本活動の次世代プロジェクトリーダー)

「本事例のタイトルにもあるように『設計思想の再構築を起点とした変革』は実際の活動の中でも強く意識し、試行錯誤しながら仕組みとして段階的に作り込んできました。その過程において活動当初は、個別部署の独立性が強く、お互いの業務状況を初めて知るような場面もたくさんありました。お客さま視点で回転機としての設計思想を一緒に再構築する活動の中で、お互いが必要としている業務情報や考えや想い等、部署間の垣根を越えた本質的な情報交換が進んできたと感じています。たとえば本活動の開始以降も、別の変革活動が始まるなど、目的の達成に向けて関連部署間での積極的なやり取りが増え始めており、環境や個々の意識がだんだんと変わってきたことを感じています。設計者全員、一人ひとりが自らの枠を超えて現状を変えていくこと、成果につなげていくことを文化として、今後たくさんのメンバーに広げていきたいと思っています」

機械事業部門
圧縮機事業部 回転機本部
回転機技術部 スクリュ室
原 圭祐 様
(本活動の次世代プロジェクトリーダー)

「本活動を開始するまでは、部署間の情報交換の機会はあまりなかったのではないかと思っています。スクリュ室の中でも、案件オーダーに関わるコミュニケーションの範囲に情報交換の機会は限られていた気がします。こういった経緯もあり、本活動の当初は、ターボ・スクリュ・レシプロで共通するはずの、配管や機器など関連情報のやり取りにも苦労した覚えがあります。本活動を通じて、まずはスクリュ室内部での情報交換や業務共通化を推進することで、関連部署との連携を強化してきており、常に改善を進めています。今は、変革活動で構築した仕組と業務を組み合わせることで、成果をより拡大していく段階に入っています。そのうえで『変革活動を持続していくこと』こそが、本当に大切だと思っています。変革活動自体が、属人化しないように、多くの方を巻き込んで、室としても部門としても推進していきたいと考えています」

機械事業部門
圧縮機事業部 回転機本部
回転機技術部 レシプロ室
田中 剛 様
(本活動の次世代プロジェクトリーダー)

「私たちの業務には改善の余地が多くある、と常々考えていました。本件活動を通じ、それらに対策ができ始めていることは大きな成果です。当初は、モジューラー設計手法を導入できないかというテーマから始まりました。検討を進めた結果、そのままでは適用が困難である、という中で、より本質的な『設計思想の体系化』という方針に至ったことをよく覚えています。それを導き出す過程として、現在の業務を徹底的に可視化・分析したことが重要であり、その結果として、目的達成への課題や方策、優先順位がシンプルに見えてきました。レシプロ室では過去に外部コンサルタントと共に変革を実施したこともありますが、その成果が今や形として残っておらず、同じことを繰り返してはいけません。長く使い続けられる設計基盤を構築するためには、自らの業務実態を理解し、あるべき姿を考え抜き、自らを変えていくその『変革実行力自体が大切』だと思っています」

機械事業部門
企画管理部
部長
野村 誉 様
(本活動のプロジェクトリーダー)

「機械事業部門において設計業務を中心に約30年間、技術に携わってきました。歴史が長い回転機事業では、効率化の目的で業務や担当部署の分業化を進めながら、専門領域ごとのスペシャリストを育んできたのだと思います。その中でも特に熟練設計者は、時間をかけて幅広い領域の技術を実践し業務全体を横断的に把握することで、高度な製品設計を実現しています。彼らが持つ暗黙的な技術ノウハウを組織の知恵として仕組み化し、生産性向上や技術伝承に活用するという本件活動に、回転機部門がトップランナーとして手を挙げてくれました。設計業務の変革において一番のコアとなるものは、当社としての設計の考え方や想いの部分であり、これは機械事業部門すべての商品設計に適用できると考えています。本件活動を通じて、若手設計者を中心に組織横断的な技術連携が活性化し始めており、本当にうれしく思っています。組織全体の技術力を底上げしお客さまに選ばれ続けるように、『このような変革活動が自律的な活動として広がり定着していく』ように、役割を果たしていきたいと考えています」

※所属部署・役職は本活動推進時のものです

  • ※1 産業機械、圧縮機などの設計製造やソリューション提案を中心とした課題解決に強みをもつ同社の主力事業の一つ。
  • ※2 回転機(非汎用圧縮機)は、石油精製・化学プラント、発電所、製鉄所などでプロセスガスの圧送や反応用途に幅広く使用され、プラントの操業において不可欠な機械。近年、生産量拡大・効率向上を目指したプラントの大型化に伴い、使用される圧縮機もターボ式を中心とした大型機の需要が高まっている。同社機械事業における主力製品であり高いシェアをもつ(ターボ・スクリュ・レシプロ)。

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