SOLIZE株式会社

変革コンサルティング

お客さま満足度のさらなる向上へ
プラント装置機器設計の暗黙知形式知化×3Dデジタル変革

エネルギー
荏原環境プラント株式会社

プラント装置機器設計の暗黙知形式知化×3Dデジタル変革  

さらなる顧客価値向上へパワーシフトする、3D設計変革を推進

荏原グループは、長期ビジョン「E-Vision2030」として「技術で、熱く、世界を支える」(https://www.ebara.co.jp/ir/business/information/vision.html)をスローガンに掲げ、未来に向けた積極的な変革活動を推進しています。同グループの環境プラント事業を担う荏原環境プラント株式会社においても、ごみ処理施設の建設・運営を軸に地域社会へのさらなる貢献のために、幅広い分野でソリューションを提供する「廃棄物資源循環ソリューションプロバイダ」を目指しています。世界的な脱炭素社会実現の加速に伴う再生可能エネルギーや省エネ需要の拡大、環境規制の変化、今後迎える設備更新工事のピークなど、同社に求められる要求は高度化・複雑化の一途をたどっています。また足元では、技術を担う熟練エンジニアの高齢化や次世代エンジニアの不足、働き方改革による効率化要求も重要なテーマとなっています。

そこで同社では、環境プラントの新規EPC(※1)における設計業務を抜本的に効率化し、創出したリソースを「より安心・安全なプラント設計」や「持続可能な社会の実現に向けた新技術開発」など、さらなる顧客価値向上へパワーシフトする変革を開始しました。

  • ※1:Engineering, Procurement and Constructionの略で「設計・調達・建設」。おもに発電所やプラントの建設などにおいてエンジニアリングの設計、資機材調達、製作、建設工事を含む一連の工程を請け負うこと。

お客さまの要求に真摯に向き合い、創意工夫を追求する設計体制

同社のプラントを構成する装置・機器の設計を担う部門の変革メンバーとSOLIZEは、業務現場において生産性向上に向けた課題構造を見極め、対策を実施していきました。

同設計部門は、お客さまからのプラント要求に関わる情報から各種装置・機器ごとの要件を具体化し、社内の他設計部署からの配置・取り合い情報を踏まえ、計画・実施フェーズに必要な設計図書類を作成します。各種装置・機器類は、スペック要求を満たす形状や配置の決定などに関し、ボイラ・タービン・発電機などの連携する主要機器との取り合いや構造の成立性において相互に強い影響を受けます。プラント全体の技術的な要求・要件も複雑で多岐にわたる中、それらは検討の主従関係/影響範囲/伝達情報/業務所掌/タイミングなど曖昧な領域が発生せざるを得ず、各設計部署は、互いに仮検討・確定待ち・必要に応じて修正を行ってました。

また、プラント全体の成立性に影響を与える要件の見極めや調整など、高度なトレードオフを熟練設計者同士の創意工夫により早期対処することで、高い品質を実現している状況も見えてきました。

「弊社の現場には、常に創業の精神『熱と誠』が脈々と受け継がれています。そこに込められた想いは、『与えられた仕事をただこなすのではなく、自ら創意工夫する熱意で取り組み、誠心誠意これをやり遂げる心をもって仕事をすること』です。 私たちは常にお客さま視点で価値を向上する設計を追求し、創意工夫する過程として、手戻りもある程度は許容してきました。一方で、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化・高度化に対応し、競合に伍していくためには、創意工夫を追求する領域と徹底的に効率化する領域をメリハリつけた設計業務へと変革するタイミングを迎えています。その意味で、改めて自分たちの現状と課題構造、目指していくべき方向性が客観的に見える化できたことは重要でした」

共通基盤本部 基盤技術部 装置・機器設計課
課長 矢後 昭彦 様

暗黙知の形式知化・プロセス再構築・標準化による設計基盤構築

SOLIZEは、同設計部門の変革メンバーと共に実績の分析と熟練エンジニアとのヒアリングを重ねながら独自手法を駆使することで、創意工夫における暗黙知であった設計プロセスとノウハウを解き明かしていきました。熟練エンジニアの暗黙知を再現するアプローチとしては、「設計全体プロセスの可視化」と「設計手法・ロジックの形式知化」の組み合わせが有効です。設計全体プロセスの可視化では、プラント全体・装置・機器ごとにおける設計情報の整流化、要件のつながりや主従関係の定義、入出力の集約統合により、どの部位のどのような検討にどの情報群を用いて設計すればよいのかを、タイミングとあわせて明確にしていきました。設計手法・ロジックの形式知化では、設計の背景・意図・技術根拠から紐解き直し、曖昧な要件群を「固定数値」「周辺要件からのパターン選択」「関連する要件・寸法値と連動した計算ロジック」へと再定義していきました。

また、それらの内容を踏まえてプラント装置・機器の徹底的な標準化を実現しました。実施設計においては、過去10年分のプロジェクト実績となる約1,000図面以上の記載情報を分析することで、各種装置・機器類における機能部位の形状/個数/位置の個(案件に依らず共通)・変(案件ごと変動部)分離を進め、パターン化を徹底しました。たとえば集じん器に関して、619設計検討項目の97%までを標準化・ロジック化しています。このように技術根拠/設計意図/実現方法を組み合わせ、標準の設計プロセスと形状/寸法に落とし込むことで、品質と効率、技術を持続的に向上するための業務基盤を再構築しました。

設計生産性を劇的に向上する、3D自動設計支援システム

再構築した設計プロセス・ロジック・標準類をベースとして、同社の2Dおよび3D CADと連動させた設計支援システムとして実装することで、計画設計・実施設計における一連の業務を一体として効率化しています。同設計支援システムは、部署内に蓄積された組織知を再現し、設計経験が少ない若手エンジニアでも、熟練エンジニアと同様の業務を効率的に実現します。計算結果の設計形状への反映、3Dデータからの2D図面出力、必須チェック部位のリコメンドや、設計図書間でのデータ連携、蓄積実績の有効活用など、広範な情報伝達を自動支援します。たとえば計画設計においては、設計仕様と類似過去実績データをインプットし、「形状設計・機器能力計算→計画図作図→見積関連情報・設計図書類の出力までを自動支援」することで、設計工数の約90%削減を実現しました。

また、実施設計においては、同様のアプローチを「3D主体の設計情報伝達プロセスの再構築」と「標準設計ロジックが実装された3D設計支援システム」を組み合わせて実施しています。3Dデータによる設計変更の都度の検討・確認・重複作業の削減とデータ連携作業の自動化により、約50%の設計工数削減を実証しています。

その結果、各種装置・機器類の設計に関する「担当者に依らない生産性向上(※2)」を実現しただけでなく、連携部署からの要求や変更に対する部署内の検討結果や必要な取り合い・配置のインターフェース情報を素早く出力することで、プラント全体を俯瞰した早期での成立性検討までを支援します。同設計部門の変革チームは、プラント設計全体の整流化までを見据えた変革を先導しています。

  • ※2:設計経験が少ない若手エンジニアでも同設計支援システムを用いることで、熟練エンジニア同様の設計品質を従来比50~90%削減した工数内で実現できる。熟練エンジニアが同設計支援システムを用いた場合も、同様の工数削減効果を得られる。それぞれを実証。

お客さま満足度向上への飽くなき挑戦、付加価値提案と先進技術開発

本活動の結果、環境プラントの新規EPC全体における設計工数の大幅な削減目標に対し、着実な成果と変革アプローチの有効性を実証し、同社の強みである「お客さまのニーズに最大限応えていく創意工夫の設計スタイル」を進化させています。

また、組織知化された自社の競争力の源泉である技術力と、生産性向上により創出したリソースを掛け合わせることで、「お客さまへの付加価値提案力の強化」や「持続可能な地域社会の実現に貢献するための先進技術開発(施設のエネルギー効率向上・CO2排出量削減・廃プラスチックの高度リサイクル)」など、同社の2030年ビジョンの実現に向けて注力すべきテーマへのパワーシフトに寄与しています。

本成果を受け同社では、本変革アプローチの適用範囲を拡大し、計画-実施設計における設計情報伝達の連動性強化やプラント設計全体の整流化、環境プラントライフサイクルトータルでの持続性・生産性を向上する変革など、横断的な活動を推進しています。

Fig.5 抜本的な効率化と付加価値領域へのパワーシフトを実現していく、暗黙知の形式知化を起点としたDX

右:共通基盤本部 基盤技術部 装置・機器設計課長 矢後 昭彦 様、
左:共通基盤本部 基盤技術部 装置・機器設計課 川村 祥真 様

「より安心・安全な環境プラントの提供はもちろん、市場やお客さまのニーズを満たす新しい技術開発の推進など、より良い製品やサービスを届けていくことが変革の目的だと捉えています。その中で、弊社の企業理念、『熱と誠』を追及し、創意工夫しながら、お客さまと共に自分たちも成長していくこと。本件活動もまさにその繰り返しでした。個別受注生産で一品一様なプラント装置・機器設計を対象に、暗黙知をロジカルな設計手法として再構築し、計画設計から実施設計まで連動した徹底的な標準化や3Dを正とした情報一元化・一気通貫、自動設計など、先駆的な変革を推進してきました。活動開始時は懐疑的なメンバーもいましたが、計画設計変革の立ち上げから、成果をもって経営陣と現場を巻き込みながら実直に推進することで、今や全社が一丸となった変革活動へと波及しています。今後も、お客さまや地域社会へのさらなる貢献を目指し、創出したエンジニアが考える時間を、ケミカルリサイクルなどの廃棄物資源循環ソリューションの技術開発へパワーシフトし、常にチャレンジしながら創意工夫を重ねていきます」

共通基盤本部 基盤技術部 装置・機器設計課長 矢後 昭彦 様

「課に配属された時点で、すでに本活動の成果の1つである、計画設計自動支援ツールが活用され始めており、数十時間にもおよぶ効率化効果と、創出した時間でより付加価値の高い業務が実施できる変革を目の当たりにしました。同様の成果を目指し、実施設計における3D自動設計支援ツールの構築を推進しています。先輩方が積み重ねてきた暗黙知を、背景・意図も含め形式知化しながら、平面→立体的な検討をするためのロジカル化を進め、3D前提での設計要件として再構築しています。本活動を通じて、荏原の技術を引き継いで、自分の中に落とし込み、仕組みとして具現化している実感があります。3Dデータを正に設計情報を一元管理することで、設備・機器設計の効率化だけでなく、現場からの手戻りを削減できる可能性も見えてきました。今後は、構築した仕組みをいかに最大活用するか、より良いものづくりにつなげられるかが、現場の設計者と共に実現していくポイントです。効率化で創出した時間と、荏原の強みである技術を掛け合わせ、新しい価値を生み出すことに挑戦していきたいと思っています」

共通基盤本部 基盤技術部 装置・機器設計課 川村 祥真 様

※所属部署・役職は本活動推進時のものです

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