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2024.06.03

プレスリリース

金属3Dプリントプロセス中の2次元画像で3次元多孔質構造を予測 ――従来の手法と比較して18倍の時間短縮に成功!――

(本件は、東京大学との共同プレスリリースです)

発表のポイント

  • 金属3Dプリント中の天面撮像とその画像処理を用いて、3次元多孔質構造の予測に成功しました。
  • サンプルを造形して3次元構造分析を行うのに比べて18倍の時間短縮に相当します。
  • レーザの出力や軌跡など多様なプロセスパラメータの条件探索の飛躍的な効率向上につながります。

3Dプリント多孔質構造の2次元画像からの予測イメージ3Dプリント多孔質構造の2次元画像からの予測イメージ

概要

東京大学大学院工学系研究科の長藤圭介准教授、趙漠居(チョウバクイ)講師、大河原崚大学院生(研究当時)らの研究グループは、SOLIZE株式会社の西来路正彦研究員、吉﨑寛研究員と共同で、金属積層造形プロセスを高速で最適化するためのその場観察の手法を開発しました。

金属積層造形は、従来の加工方法に比べて複雑な構造を造形できる反面、サンプルの造形と評価に時間がかかるため、プロセスパラメータから最適な条件を探索するには勘・コツ・経験に依存してきました。

本研究では、サンプルの造形中の天面を観察することで、内部の3次元構造を予測する方法を開発しました。

本成果は、2024年6月3日(日本時間)に、国際生産工学アカデミー誌「CIRP Annals – Manufacturing Technology」にオンライン掲載されます。

発表内容

〈研究の背景〉

金属3Dプリンティングは、切削加工や型成形加工ではできない複雑な構造を造形できる方法として期待されています。実際に、複雑な冷却流路を有する金型や、骨組織のアンカリング構造を有する人工関節の部品など、応用範囲はますます広がっています。

金属粉を層状に敷き、レーザを走査させ溶融・凝固を選択的に行う、これを繰り返すことで3次元構造を得ます。レーザのパワーやスキャン速度など、パラメータの選択肢の数が膨大でそれを探索するのは人の勘・コツ・経験に頼ってきた部分がありました。

〈研究内容〉

本研究では、多孔質構造の3Dプリンティング試作中のサンプルの天面を1回撮像し画像処理することで、内部の構造を予測する方法を開発しました。3次元構造をX線CTで解析し、空隙率と平均孔径を算出し、その結果に合うような、天面撮像方法と画像処理を行うことで、内部の構造を予測することができます。この方法を用いて、試作サンプルを取りはずすことなく、1回の撮像で内部の構造を予測することができます。25個同時に試作した場合で、X線CT撮像と比較して、18分の1の測定時間で予測することができ、3次元画像を2次元画像から予測する予測確率に相当する決定係数は0.88と高い値を達成できました。SOLIZE株式会社にてサンプル作製および光学顕微鏡撮影、東京大学にてX線CT撮像、両者で予測アルゴリズム開発を行いました。

〈社会的意義・今後の展開〉

本手法は、図1に示すように、膨大なプロセスパラメータ候補から素早く最適化する、すなわち探索を大幅にハイスループット化する「プロセスインフォマティクス」の計測方法として有用な方法で、新たなプロセスの発見への強力なツールとなり得ます。

本研究で対象としたステンレス材料の多孔質構造は航空宇宙分野の次世代の熱交換器を対象にしたもので、その製造パラメータの最適化のための開発期間を飛躍的に短縮する方法として期待されます。

熱交換機能の構造だけでなく、高強度構造、高耐食性構造にも適用でき、医療分野、モビリティ分野にも貢献します。

図1:2次元データから3次元データを予測する方法を用いた探索イメージ図1:2次元データから3次元データを予測する方法を用いた探索イメージ

関連情報:

論文「レーザ金属積層造形法における飛散粒子のその場観察を用いた機械特性予測」(2023/2/7)
https://doi.org/10.1016/j.matdes.2023.111696

発表者・研究者等情報

東京大学大学院工学系研究科
 長藤 圭介 准教授
 大河原 峻 研究当時:修士課程
 趙 漠居(チョウ バクイ) 講師

SOLIZE株式会社
 西来路 正彦 研究員
 吉﨑 寛 研究員

論文情報

  • 雑誌名:CIRP Annals - Manufacturing Technology
  • 題 名:One-shot acquisition of intermediate feature values for in-process parameter exploration in PBF-LB of ultrafine porous metallic structure
  • 著者名:Keisuke Nagato*, Ryo Okawara, Hiroshi Yoshizaki, Masahiko Sairaiji, Moju Zhao
  • DOI:10.1016/j.cirp.2024.04.099
  • URL:http://doi.org/10.1016/j.cirp.2024.04.099

研究助成

本研究は、科研費「金属積層造形における超高速その場観察を用いたレーザ焼結現象の解明(課題番号:23K22644)」の支援により実施されました。

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