変革
エンジニアリングサービス

技術継承と効率化を支援、
整定計算ノウハウの形式知化とナレッジシステムの構築

エネルギー
北陸電力送配電株式会社

技術継承と効率化を支援、整定計算ノウハウの形式知化とナレッジシステムの構築

電力の持続的な安定供給に向け、熟練暗黙知の技術伝承を推進

脱炭素社会実現の加速に伴う再生可能エネルギーや省エネ需要の拡大、人口減少や産業構造の変化など、エネルギー業界の事業環境は大きく変化しています。北陸電力グループは、2030年ビジョンとして「北陸と共に発展し,新たな価値を全国・海外へ」(https://www.rikuden.co.jp/hoshin/) を掲げ、グループ一体での変革活動を実施しています。

同グループの送配電事業を担う北陸電力送配電株式会社は、「電気を安定的にお届けする」使命のもと、送電・変電・配電・給電・ネットワークサービス部門が高度に連携したチームワークで電力の安定供給に努めています。今後迎える設備更新工事のピークや、多発・激甚化する自然災害への対策、送配電網の高度化を見据え、技術継承を加速し、業務品質の向上や効率化に向けた積極的な変革活動を推進しています。

中でも、電力設備を雷や風雪害などの自然災害から守る保護継電装置に関わる整定計算業務は、電気工学や電力系統解析といった高度な技術の他、過去の災害や事故事例などから蓄積された横断的な技術的知見や経験知が集積する重要な業務の1つです。しかし、少数精鋭の運用体制であるため、熟練者の高齢化・定年退職による技術者不足や、働き方改革による効率化要求により、技術継承と効率化が重要なテーマとなっていました。

  • ※各変電所にある保護リレーが電圧と電流を常にモニタリングし、閾値を超える異常な値を検知した際は、遮断器を瞬時に開放して停電範囲を最小限に抑える安全機能と、事故消滅後は直ちに電気を送る自動復旧機能を兼ね備えた装置が設置されている。この判定基準の閾値となる電圧と電流を最適な値に設定するのが整定計算業務。

Fig.1 送電線における事故発生時の影響を最小化する整定計算のイメージ

少数精鋭が技術を担う現場、暗黙知・OJT中心の高度業務

SOLIZEは整定計算業務の現場に入り、同社の中期計画実現に向け基盤となる「永続的な技術継承の仕組みを構築すること」を目的に対策を実施しました。

整定計算業務は、系統や保護継電装置の変更/新設時において、系統や送電線の諸元情報をもとに指針に従って各種計算・検証を行い、整定値を決定、過程と結論をのせた整定計算書を出力します。約1,320設備を対象に、地域ごとに配備されたエンジニアが年間40~50件ほどの改定処理を行っていました。

整定計算技術に精通したエンジニアは少なく、熟練者が常に同一職場にいるとは限らず、非熟練者は社内の規定基準と過去の計算実績を頼りに実務で学ばざるを得ない環境でした。また、実系統は設備更新の経緯もあり、定義や運用を統一しきれない部分や、事業所ごと・装置特性ごとの個別検討が必要な領域も増加していました。これらのノウハウが、属人化や、過去計算実績に埋もれるなど、必ずしも十分に継承しきれていませんでした。

その結果、非熟練者は整定値選定基準と検証項目が相反する場合の優先順位や対処が困難で、過去実績の探索や熟練者に助言を求めるしかなく、技術継承や効率面の課題となっていました。こうした状況の中、少数精鋭の整定担当者は担当地区領域において、個々の技術と強い責任感で高度な業務品質を全うしている状況が見えてきました。

熟練暗黙知を5種類15項目のナレッジを組み合わせ体系化

SOLIZEは、実績の分析と熟練エンジニアとのヒアリングを重ねながら独自手法を駆使することで、人・組織の暗黙知を解明していきました。

整定計算においては、各リレーが複数要件を同時に満たす数値を算出していく中で、一意に閾値が決定できない場合や排反が生じた場合、また検証項目NGの場合の対処に、熟練の判断を必要としており、熟練エンジニアは過去類似事例・関連ドキュメント・同一系統内の整定値に関する記憶と経験、技術根拠を踏まえ、最適な判断をしていることがわかりました。

その判断を解き明かし、対象設備ごとの整定値として守るべき必須要件を整理、個々の要件の検証に対して必要な前提や制約内容の考え方および判断基準を、背景や意図を含め可能な限り数値に置き換えて可視化していきました。その結果、「電気系統保護技術の共通ノウハウ(原理原則)」をベースとして、暗黙的領域は「整定計算実行に必要な固有ノウハウ(系統ごと/装置ごと/地域ごとの個別パターン)」「高度なトレードオフ・検証NG対処の判断(優先順位ロジック)」で構成されていることを見出しました。 これらを踏まえ、熟練エンジニアの暗黙的観点を、5種類15項目のナレッジとして体系化し、実際の検討プロセスに紐づけて活用できる仕組みとして整備していきました。

Fig.4 熟練暗黙知を5種類15項目のナレッジを組み合わせて解明、実務面・技術伝承面を考慮し体系化(図のピンク色の領域のノウハウが熟練の暗黙的判断領域)

ナレッジシステムで迷う/悩む/探すを削減、本質的な技術実践に注力

整備したナレッジや日々組織内に蓄積される関連実績を業務連携させたナレッジシステムを構築することで、整定値の計算・成立性判断やデータ作成に付随した作業工数・リードタイムも削減しています。たとえばナレッジシステムは、インプット情報一式を踏まえ、担当者に対して数理検証すべき項目をリコメンドするだけでなく、系統情報から紐解いた検証項目を踏まえ、それに適切な計算ロジック・計算フォームを用いての各種検証を半自動で支援をします。設備間での成立性がNGの場合や、高度なトレードオフ検討が発生した場合は、担当者に、それらの判断や優先順位の指針となるナレッジや類似の過去実績をリコメンドすることで、業務遂行と技術の実践を支援します。また、ナレッジシステムを中心とした、情報更新の仕組みも現場と共に立ち上げ、KPIの設定と併せて、状況をモニタリング・改善することで、技術を常に見直し、進化し続ける基盤を実稼働させました。

これにより、誰もが整定計算における技術根拠・整定意図・実現方法を正しく理解したうえで効率よく業務を実施でき(従来比約40%の工数削減を実証)、より複雑なトレードオフや検証NGへの対策、設備全体の成立性検証や最適化などの高度判断領域に人の時間を集中させることで、実践的な技術人財育成の早期化はもちろん、業務効率および品質向上を実現しています。

技術継承基盤を整備し、安定供給に向けたさらなる変革に邁進

規程基準に基づきながらも具体的な運用や解釈は担当者個人に頼っていた整定計算業務において、体系化された系統保護技術のナレッジ基盤を構築したことで、技術継承と人財育成を支援する仕組みが完成しました。また、デジタルツールによる効率化やバラつきの防止、経験・実績の蓄積と有効活用を支援する対策にも寄与することができました。本活動は、カーボンニュートラルの実現に向けたスマートで強靭な送配電網の高度化など、同グループの2030年ビジョンの変革につながっています。

Fig.7 形式知化した組織の技術・知恵に立脚し、迅速で効果的な技術継承を実現する人財育成基盤へ

「自社内でも高度な技術領域の一つである整定計算ノウハウを体系化してくれたSOLIZEの業務理解と形式知化手法、スピードはとても印象的でした。技術として継承していく領域と、自動化や他システム連携で効率化する部分のメリハリをつけたことで、人が考え・判断することを支援するナレッジシステムとして実装できました。また、業務過程で生まれる実績や新しいノウハウを柔軟に取り込み進化させるフィードバックループも仕組みとすることで、人・技術・システムが協調して成長し続けるための、土台ができたと思っています」

電力流通部 特任副部長(業務改革・カイゼン担当) 笹林 健一 様

左:電力流通部 専任課長(系統保護担当) 福村 和男 様、右:富山総合制御所 喜多埜 晃輔 様

「金型設計・製造の熟練エンジニアの暗黙知を形式知化した実績から始まったというSOLIZEの強みに納得しました。ヒアリングの的確さ、ノウハウを形にしていくスピードが特に印象的でした。最終決定を導き出す人の判断を支援する技術伝承と効率化の両立により、若手が、根拠や過去実績に基づく提案や最適値の適用ができるようになりました。今後、再生可能エネルギーの適用が加速すると保護リレー等の電力設備に求められる要求も高度化・多様化していきます。電力の持続的な安定供給にむけて、本活動は、整定計算のみならず送配電技術を適切に継承や実行していくための重要な変革につながっていくと感じています」

電力流通部 専任課長(系統保護担当) 福村 和男 様

「これまでは現場で困難であった整定計算が、効率よく・迷わず実施できている実感があります。作業領域は自動でカバーされ、特異な部分や人が考え判断しなくてはならない領域に時間をシフトできているだけでなく、背反する条件を検討する場合の拠り所となるノウハウ類も整備されたことで、技術根拠や背景までを理解しながら業務に取り組めています。使うほど、検討パターンとなる実績の有効活用が進む感触もあります。今後しっかりと仕組みを業務に適用しながら、少数精鋭となっている自社の技術領域の継承に活用していきたいと考えています」

富山総合制御所 喜多埜 晃輔 様

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