一人ひとりの耳に合わせて作るオーダーメイドの充電式補聴器
「Insio Charge&Go AX」の店頭用モックアップ製作に協力

高品質で最終製品に劣らない見栄えのモックアップ製作に
SOLIZEの3Dプリント試作品製作サービスを採用

シバントス様のメインブランドであるシグニア補聴器は、聞こえをサポートするだけでなく、ユーザーやその周囲の人のQOLを上げるための製品を数多く送り出しています。従来、日本の市場では「補聴器＝年寄りじみている」という印象があり、それゆえに補聴器を使い始める時期を遅らせてしまうケースが少なくありません。眼鏡などと同様に、少し不便を感じはじめた頃に迷わず使い始めることができるよう、シバントス様では、機能・品質にこだわるのはもちろんのこと、補聴器外観のデザインにもこだわり、より多くの方により早くから使用いただけるよう製品開発とブランディングを進めてきました。そして今回、Signiaの最新シリーズの中の一機種、充電式オーダーメイド耳あな型「Insio Charge&Go AX」の店頭用モックアップ製作に、SOLIZEの3Dプリント試作品製作サービスが採用されました。

世界初ダブルプロセッサー補聴器「Signia AX」シリーズとは

補聴器には通常1つのプロセッサーが搭載されており、人の声と周辺の雑音を一緒に処理するのが一般的ですが、「Signia AX」は世界で初めて、音声処理用プロセッサーを2つ搭載しました。補聴器が聞いた音を言葉と環境音に分離、1つのプロセッサーが言葉を処理し、もう１つのプロセッサーが環境音を処理します。2つの種類の音を別々に処理することで明確なコントラストをつくり、言葉はよりくっきりと、環境音はよりすっきりと聞こえるようになります。会話がはっきり聞こえることはもちろん大切ですが、周りの音も重要な情報です。身の周りで発生している環境音も適度に聞こえることで、より自然で安全な生活を送ることができます。

Signia AXを搭載した「Insio Charge&Go AX」の店頭用モックアップ製作

Signia AXを搭載した充電式耳あな型補聴器「Insio Charge&Go AX」は、一人ひとりの耳の形状をかたどり、それを3Dデータ化して自社工場の光造形機を用いて製作する、完全オーダーメイドの補聴器です。耳型をとる必要がなく、誰の耳にも合いやすい汎用モデルもありますが、その多くは耳の後ろにひっかけるタイプのため、特にマスクをすることが多い現代では、マスク着脱の際に補聴器も一緒に外れてしまうことがあります。「Insio Charge&Go AX」は耳穴に挿入するタイプの補聴器のため、マスクや眼鏡の着脱に影響がなく、コロナ禍においては重要な主力製品として位置づけられました。シバントス様はこの製品を日本で販売するにあたり、日本人の体型にあった日本オリジナルの店頭用モックアップを製作することにしました。普段はモックアップであっても海外製のものを利用しますが、多くの日本人には合わない形状であったこと、またコロナ禍での流通の乱れや為替の変動が発生するなど、海外とのサプライチェーンでは不安な要素があるため、今回は国内でモックアップを製作することを検討しました。

国内3Dプリント試作メーカー探しが難航

シバントス様は国内の3Dプリント試作メーカーを探しはじめましたが、人の耳をかたどったような自由曲線が多い複雑な形状、側面部分の細かい段差、ピアノブラックのようなくっきりとした黒色で鏡面仕上げレベルの光沢感、日本ではあまり使われていないCADファイル形式など多数のハードルがあり、高額な見積りを提示されたり素人扱いされたりして、なかなか納得できる回答は得られませんでした。こうした中、最後の望みをかけて連絡をしたのがSOLIZEでした。

最終製品と比較してもまったく見劣りがしない品質を実現

問い合わせ後すぐに対面での打ち合わせを行い、その数日後には最初のサンプルを提示しました。SOLIZEの提案は、微細形状の再現性が高く表面品質もきれいなDLP方式の光造形機「Figure 4」のPRO-BLK10を用いた3Dプリントのモックアップでした。黒味がはっきりしているPRO-BLK10にさらに磨きを入れてクリア塗装をすることで、最終製品と比べても見劣りのしない品質に短納期で仕上げることができました。何より、他社から提示された３Dプリント品、注型や簡易金型などの他の工法に比べて、コストや納期の面でも大変満足できる内容でした。

シグニア補聴器の中でも最新シリーズの製品であり、オーダーメイド器種でもある「Insio Charge&Go AX」は、完成した最終製品がお客さまの想像していたものと乖離しているわけにはいきません。そのため、モックアップであっても補聴器販売店の担当者の評価は厳しく、合格点を得ることは容易ではありません。特に今回は、初めて日本の試作サービスビューローを採用したこともあり、その評価への期待と不安がありました。ところがSOLIZEの「Insio Charge&Go AX」のモックアップは、販売店から追加発注の依頼があるほど好評でした。見た目はもちろんのこと、人の耳をかたどって作る複雑な形状を忠実に再現しており、バリやパーティングラインのない光造形3Dプリントならではの滑らかな曲線は、思わず自分の耳に入れてしまいたくなるような仕上がりとなっています。光沢感のあるピアノブラックも高級感があり、自社工場で製作する最終製品と比較してもまったく見劣りがしない品質で、日本での販売は好スタートを切ることができました。

補聴器のモックアップ600個を短納期生産

次のハードルは、このモックアップを短納期で600個生産することでした。SLA方式の光造形機の場合、ピンポイントのレーザーでレジンを硬化するため時間がかかりますが、今回はプロジェクターを用いて面単位でレジンを硬化させるDLP方式の「Figure 4」を用いることで、比較的短納期での生産を可能にしました。またシバントス様から販売店への発送スケジュールを加味して分納での納品とすることで納期コントロールし、「Insio Charge&Go AX」の販売機会を逃すことなく、すべての製品を希望納期どおりに納めることができました。

3Dプリンターの製品製作だけでは終わらないSOLIZEのきめ細やかなサービス

光造形機で製作したモックアップのクオリティに加え、梱包に至るまでのSOLIZEのきめ細やかな対応が評価されました。通常、補聴器モックのような小さなパーツは試作メーカーで製造され、数十個単位でバルク梱包し発送されることが一般的です。今回のモックアップ製品はすべて個包装し、各包装パッケージに説明書を同梱、パッケージには製品シールを貼り、各販売店に発送する必要がありました。これをSOLIZEに相談したところ、すべての対応をSOLIZEが引き受け、シバントス様は納品されたモックアップを各販売店に発送するのみとなりました。

製品モックアップ以外での活用事例：耳穴計測治具