SOLIZE株式会社

MBD

構造設計にフォーカスした、冗長電源制御システム開発プロセスの変革

自動車OEM
トヨタ自動車株式会社

構造設計にフォーカスした、冗長電源制御システム開発プロセスの変革

増大する要求に対応可能なソフトウェア構造実現に向けた設計変革機運の高まり

トヨタ自動車株式会社は、「幸せの量産」を使命とし、クルマの未来を変えていくために、モビリティ・カンパニーへの変革を目指しています。「カーボンニュートラル」と「移動価値の拡張」という二つの大きなテーマを掲げ、これまで培ってきたクルマの本質的な価値を基盤にもっと社会の役に立つ存在へクルマを進化させ、誰もが自由に、楽しく、快適に移動できるモビリティ社会を実現することを目指し、挑戦を続けています。

同社制御電子プラットフォーム開発部では、ソフトウェア・ハードウェアアップデートを見据えたクルマ全体の電気・電子システムの機能配置を考え、ソフトウェアファーストなクルマを実現する電子プラットフォームの構築を担っています。これからのクルマ開発において、多様な機能を協調して制御する技術の開発領域はさらに拡大していくとみられており、さまざまな要求や関係する機能の増大に伴い、ますます複雑化していくことが予想されています。その流れは電子プラットフォームの構築においても例外ではなく、増大する要求に対応可能なソフトウェア構造とそれを実現する設計スタイルの確立が急務となっていました。

増え続ける要求への対応と品質の確保が両立しきれない潜在リスクへの打ち手

従来、電源開発においては、市販実績のあるソースコードに追加、編集していくことで、品質と短納期開発の両立を実現してきました。一方で、ソフトウェアの大規模化、複雑化の進展はとどまるところを知らず、期日までに検証をやりきるためには、人と時間をかけ、力業で品質を確保せざるを得ない状況が多発するようになってきていました。

現時点でお客さまに提供している製品の品質に問題は発生していなくとも、今後これまで以上に複雑化していくソフトウェア構造に対して品質を確保し続けるためには、抜本的な変革が必要な状況であることは明白でした。

そのような背景から、機能配置の最適化、要求分析を起点とするトレーサビリティの確保、モデルベース開発プロセスのさらなる推進といった取り組みが、品質・生産性の向上やリードタイムの短縮につながること、またその取り組み自体が技術の手の内化につながることを想定したうえで、3~4年先を見据えた抜本的な変革活動がスタートしました。

アーキテクチャ設計にフォーカスした、先行検証型の開発スタイルを実現する取り組み

SOLIZEは、対象とする冗長電源制御システムの制御仕様やソースコードを徹底的に分析したうえで、複雑化したシステムを独自の手法で紐解いていきました。その分析内容から、機能自体の定義やその影響範囲、要件の重複などが明確になったことで、機能配置の見直しや機能の統廃合を両社協働で進めることができました。結果として、機能は約2/3に集約され、見通しのよいアーキテクチャとして再構築することを可能としました。

Fig.1 仕様分析のアプローチ

冗長電源制御システムは、「電源失陥時のフェールオペレーション中に周辺機能の電源をバックアップする」という役割のため、周辺機能からの厳しい安全要求を満たす必要があります。また、機能の拡大に伴い、バックアップの要求元が増加していく傾向にありました。

このようなシステム特有の状況から、アーキテクチャ再構築の方針を「機能ブロックごとの責務を単一とし、機能ブロックの入れ替えが可能」であることと定義し、4つの機能分類が順に並ぶ構造に再構築しました。この方針に基づいて再構築した結果、機能ブロックを部品のように捉えることで、仕様変更に伴う機能変更の影響範囲を小さくすることができました。

Fig.2 再構築後の構造

また、すでにあるモデルベース開発プロセスと連携させるために、アーキテクチャの再構築と並行して現在のソースコードのモデル化を実施しました。その際、単にモデル化するだけでなく、モデル構築ガイドラインやノウハウ集の作成とその実践を進めたことで、複数人による開発時においても一定以上の品質を効率的に確保可能な状況が実現できています。

これら両輪の取り組み推進により、アーキテクチャが最適化され、モデル主導による先行検証型の開発スタイルの運用実現に目処が立ちました。

新しい開発スタイルの定着と変革活動のさらなる横展開

同社では、再構築したアーキテクチャに従い制御仕様を整備することで、その先のMATLAB/Simulink®で構築したモデルを用いた検証(MILS※1)や自動コード生成(ACG※2)までを一気通貫で推進するプロセスを確立し、新しい開発スタイルを手の内化することができています。

その結果、開発自体の効率化に加え、細切れの業務分担による情報伝達の無駄が削減されたり、自動化に向けた動きが進展したりするなど、付帯的な効果も生まれてきています。

さらに、手の内化した分析手法をもとに、新たなシステムの要求分析を進めるなど、波及効果を見据えた横展開を加速、同社内での変革を止めずに推進されており、さらなる効果の刈り取りが期待されています。

  • ※1:Model In the Loop Simulationの略
  • ※2:Automatic Code Generationの略

制御電子プラットフォーム開発部
車両電源システム開発室
グループ長
安部 典男 様

「SOLIZE様には内製制御ソフト開発における開発プロセス改革に協力いただきました。特に最初の進め方の方向付けをしていく段階では、開発現場に入って実態を理解していただきながら一般論ではなく、現場やプロダクトの実情に合った最適な進め方を共に悩み考えながら提案していただけたことが非常に助かりました。また、我々の技術の手の内化に向けた想いも汲んでいただき、顧客目線で目的が達成できるように技術力向上や仕組み構築に向けて伴走いただけたことは非常にありがたかったと思っております」

制御電子プラットフォーム開発部
車両電源システム開発室
高原 義幸 様

「クルマ開発の将来を見据え、既存の開発プロセスを見直す活動として、ソフト構造再設計/実装モデル作成/要求⇔ソフトのトレーサビリティ確認をSOLIZE様と共に進めてきました。各要求がソフトのどこで実装され、変更がもたらす影響がどこまでか、実装経緯や必要性を弊社担当と一緒に明らかにすることで、共通認識のもとアイデアを出し合い、より深掘りされた検討を進めることができたと感じています。SOLIZE様との本活動は、構造設計の考え方や先行検証型の開発プロセスの構築を通して、決して一時的なものではなく、弊社の制御開発の技術力底上げにつながったと感謝しております。本当にありがとうございました」

※役職は本活動推進時のものです

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